FortiGateのソフトウェアスイッチ(Software Switch)は、複数の物理ポートやWi-Fiインターフェース、仮想インターフェースを論理的に1つのインターフェースとしてまとめる機能です。
これにより、まとめられたポートは同じL2ドメインに属し、スイッチ全体で1つのIPアドレスを持つようになります。
小規模LANの構築や、複数ポートを簡易的に「LAN」として運用する際に有効です。
主な用途
- LANの一元化
複数のポートを1つのLANとしてまとめ、IPやDHCPサーバ設定を一括管理できる。
- VLANの展開
ソフトウェアスイッチを親にしてVLANサブインターフェースを作成可能。ただし、各ポートごとに異なるPVIDを割り当てるような高度なスイッチ機能は持たない。
- 簡易スイッチ代替
専用スイッチを導入しなくても、複数ポートを同一ブロードキャストドメインで扱える。
ポリシー制御の仕組み
- デフォルト(implicit)
ソフトウェアスイッチ内部の通信は、ファイアウォールポリシーを通さず自動的に許可されます。
- explicit設定
intra-switch-policy explicit
に変更すると、内部通信もファイアウォールポリシーの制御対象となります。さらに、対応モデルではNP(Network Processor)によるオフロード処理が有効になり、性能を確保できます。
補足:多くの誤解として「ソフトウェアスイッチは常にポリシー制御不可」という記述がありますが、explicit設定を使えば制御可能です。
性能面の考慮
- CPU処理依存:implicitモードでは基本的にCPU処理となり、大量トラフィックで性能低下する可能性あり。
- オフロード可能:explicitモード+適切なポリシー構成では、NPハードウェアによる高速処理が働くため、パフォーマンス面の制約を緩和できます。
STP・LACPなどの制約
- STP(スパニングツリー)
- ハードウェアスイッチはSTPをサポート(ポート単位で有効化可能)。
- ソフトウェアスイッチはSTPに参加しません。BPDUフレームは透過しますが、ループ防止機能は期待できません。
- LACP(リンクアグリゲーション)
- 一般的にはアグリゲートインターフェースをソフトウェアスイッチに追加できません。
- 例外として、FortiLink用途のソフトウェアスイッチではLAGをメンバーに含めることが可能です。
メンバー化の制約
- インターフェースをスイッチに追加するには、他で参照されていないこととIP未設定(0.0.0.0/0)であることが条件です。
- 1つの物理ポートを複数のスイッチにまたがって所属させることはできません。
設定例(CLI)
port1
と port2
を「lan」というソフトウェアスイッチにまとめる例です。
config system switch-interface
edit "lan"
set member "port1" "port2"
set intra-switch-policy explicit
next
end
これにより lan
が1つのLANインターフェースとして扱われ、ポリシー制御も可能になります。
まとめ
- ソフトウェアスイッチは簡易的な仮想スイッチであり、LAN統合やVLAN展開に便利。
- デフォルトでは内部通信はポリシー制御不可だが、
explicit
設定によりFWポリシーで制御可能となり、NPオフロードも効く。
- STPやLACPなどの高度なL2機能は非対応または制約あり。必要ならハードウェアスイッチやFortiSwitchとの連携が推奨される。
以上、FortiGateのソフトウェアスイッチについてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。