FortiGateのHA(High Availability)構成は、ネットワークの冗長性と可用性を高める重要な仕組みです。
しかし、HAの同期が失敗すると、冗長構成の意味が失われるだけでなく、サービス停止リスクや障害復旧の遅延にも直結します。
この記事では、HAの同期がされない/不安定になる場合の主な原因とその具体的な対処法を、実務視点で徹底的に解説します。
症状 | 想定される原因 |
---|---|
セカンダリユニットがクラスタに参加しない | ファームウェア不一致、物理リンク異常、設定差異 |
HAが「out of sync」状態になる | インターフェース設定差異、証明書未同期、ログ差異 |
一時的に同期されるがすぐ切れる | heartbeat通信障害、MTU不整合 |
セカンダリが誤ってマスターになる | priority 未設定、override無効 |
get system interface physical
でリンク状態を確認HA構成には完全一致したファームウェアバージョンとビルド番号が必要です。
get system status
HAクラスタでは、デフォルトでシリアル番号が小さい方がマスターに選ばれます。
意図的にマスターを固定するには、以下の設定を適用。
config system ha
set group-name "HA-GRP"
set mode a-p
set priority 200
set override enable
set hbdev "ha1" 100
end
※
override
が無効の場合、シリアル番号でマスターが決まるため注意。
FortiGate HAでは、以下の設定項目は自動で同期されません。
同期されない項目 | 対処方法 |
---|---|
管理者パスワード | 手動で設定 |
ローカル証明書 | GUIまたはCLIで個別にインポート |
FortiCloudログ、ログディスク設定 | 同一構成に手動変更 |
管理インターフェースIP(通常は各ユニットで別IP) | 明示的に設定 |
セカンダリを初期化せずに手動設定をしていた場合、差異が原因で「out of sync」になることも。
HAは内部的にheartbeat(心拍)パケットを使って同期と生存確認を行っています。
diagnose sys ha status
でheartbeat状態を確認config system ha
にて hbdev
に複数ポートを割り当て、冗長化GUIで「HA out-of-sync」と表示された場合、ログで原因を突き止めることが重要です。
diagnose debug enable
diagnose debug application hatalk -1
このログから、
ごく稀に、セカンダリユニットのファイルシステムが破損しており、何をしても同期できない/不安定になることがあります。
execute factoryreset
HA構成そのものにはライセンスの一致は必須ではありませんが、ライセンス差異があると以下のような影響が出る可能性があります。
項目 | 影響 |
---|---|
FortiGuard WebFilter | 機能に差異が出る |
FortiCloudログ保存 | セカンダリがログを送信できない場合あり |
自動バックアップ | FortiCare未登録機では不可 |
get system ha status
で同期ステータスを確認diagnose sys ha status
でheartbeat状態をチェックdiagnose debug application hatalk -1
で同期エラーを特定項目 | 推奨設定 |
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HAインターフェース | 専用物理ポートを使用(共有しない) |
heartbeatポート | 2系統以上を設定し冗長化 |
優先度設定 | set priority + set override enable を使用 |
同期トリガー | セカンダリは初期状態でHAクラスタに参加させる |
ログ監視 | hatalk ログを定期的に確認 |
ファイル同期 | ローカル証明書などは手動で反映すること |
FortiGate HAが同期されない場合、その原因は物理接続から設定の細部、ログ確認まで多岐にわたります。
トラブルが発生した際は、以下の3つを意識して対処しましょう。
HA構成は冗長化の要であり、障害対応力がネットワークの信頼性を左右します。
本記事を参考に、堅牢なHA環境を維持・復旧できる体制を整えてください。
以上、FortiGateのHAが同期されない場合の対処法についてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。