FortiGateファイアウォールにおいて「プロキシベース(Proxy-based)」と「フローベース(Flow-based)」の2種類のインスペクションモード(検査方式)は、トラフィックの検査方法において大きく異なります。
それぞれの仕組み・特徴・メリット・デメリットを深掘りして解説します。
概要比較表
項目 |
プロキシベース(Proxy-based) |
フローベース(Flow-based) |
処理方法 |
一度FortiGateが通信を受け取り、代理で処理する |
パケットをリアルタイムでスキャンしながら転送 |
処理タイミング |
コンテンツ全体を受信してから検査 |
通信中に逐次スキャン(ストリーミング) |
検査精度 |
高い(フルコンテンツ解析) |
通常は速いが一部検査精度が落ちることも |
パフォーマンス |
重い(特に大規模環境で) |
軽い(スループット重視) |
対応機能 |
詳細なウイルス検出・DLP・FortiSandbox連携など |
一般的なAV・IPS・アプリ制御など |
推奨用途 |
セキュリティ重視・コンテンツ制御が必要な環境 |
高パフォーマンスが求められる環境 |
プロキシベース(Proxy-based Inspection)の詳細
処理の流れ
- クライアントからのリクエストがFortiGateに届く。
- FortiGateが「プロキシ」として通信を代行。
- サーバーからのレスポンスをFortiGateがすべて受け取り、コンテンツ全体を解析。
- 問題なければクライアントに転送。
特徴
- フルコンテンツの検査が可能(ファイル全体を保持してから判断するため)。
- DLP(Data Loss Prevention)やSSL復号後の精密検査に最適。
- スキャン精度が高く、FortiSandbox連携で未知の脅威検知も可能。
- メール・Web・FTPなど特定のプロトコルに強い。
利点
- 高度なセキュリティ対策が可能。
- 悪意のあるコードや情報漏洩の精密検知。
- ファイルサイズや内容に応じた柔軟なポリシー設定。
欠点
- 処理が重くなりがち。多量のトラフィックや大容量ファイルで性能低下。
- レイテンシ(遅延)が発生しやすく、リアルタイム性が求められる環境では不利。
フローベース(Flow-based Inspection)の詳細
処理の流れ
- パケットがFortiGateを通過する際に、
- ストリーム(リアルタイム)でインスペクションを実施。
- 通信を中断せず、継続的にスキャンしながら通過させる。
特徴
- トラフィックの一部を検査しながら即時処理。
- ストリーミングAVやIPSなど、処理速度を優先。
- SSL復号も対応可能だが、一部機能はProxyより制限あり。
利点
- 高速処理が可能(ネットワーク性能を落とさない)。
- 特にデータセンターや高速インターネット接続環境に適する。
- FortiASICやNP(Network Processor)との連携で高スループット。
欠点
- 完全なコンテンツ分析ができない場合あり。
- 高度なDLPや一部の詳細スキャン機能は利用できない。
- 通信の一部しか見ないため、ゼロデイ攻撃や難解なマルウェア検出には不向きなことも。
どちらを選べばいいか?目的別の選定ガイド
利用シーン |
推奨モード |
ウイルス対策・ファイル検査の精度を最重視 |
プロキシベース |
業務アプリの高速通信を維持したい |
フローベース |
情報漏洩対策(DLP)を強化したい |
プロキシベース |
高トラフィック・高スループット環境 |
フローベース |
一般的なウェブ閲覧の制御・IPS |
フローベースで十分 |
電子メールの添付ファイルの検査 |
プロキシベース(特にFortiMail併用時) |
モードの設定場所
FortiOSのGUIで以下のように設定可能です。
- ポリシーごとに設定可能(プロキシ / フロー)
→ セキュリティポリシーの中にある「インスペクションモード」で切替可能
- UTMプロファイルの適用
各モードに応じて利用可能なセキュリティプロファイルが異なります。
注意点
- 一部のUTMプロファイル(特にDLPや高度なWebフィルタ)は、Proxyモードでのみ有効。
- FortiOSのバージョンやモデルによって、サポートされる機能・パフォーマンスが異なるため、運用環境に応じたテストや設計が重要。
- 実際には、用途によって両者を使い分けるのが一般的(メールはProxy、WebはFlowなど)。
まとめ

観点 |
プロキシベース |
フローベース |
セキュリティ重視 |
◎ |
○ |
パフォーマンス重視 |
△ |
◎ |
SSLインスペクション精度 |
◎ |
○ |
サポートされる機能数 |
多い |
限定的 |
ネットワーク遅延 |
発生しやすい |
少ない |
最適なモードはネットワークの目的・トラフィック量・セキュリティ要求に応じて決めることが重要です。
以上、FortiGateのプロキシベースとフローベースの違いについてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。