VPNが遅く感じるのは、単に「暗号化しているから」という単純な話ではありません。
実際には、通信経路の変化・暗号処理・カプセル化・サーバー側の処理・回線品質・プロトコルの挙動 など、複数の要因が組み合わさって速度や体感に影響します。
以下では、一般的に発生しやすい原因を、より正確な視点で解説します。
VPNを使用すると、通信は一度VPNサーバーを経由します。
その結果、物理的・論理的な経路が変わります。
これにより遅延(RTT)やジッタが増加する場合があります。
ただし、必ずしも遅くなるとは限りません。
ISP側の国際回線が混雑している場合などは、VPN事業者の回線品質の方が良く、逆に改善するケースもあります。したがって「遠回り=常に遅い」というわけではありません。
VPNでは通信内容を暗号化・復号します。この処理は端末側とVPNサーバー側の双方で行われます。
影響が出やすいケース
最近のCPUにはAES-NIなどの暗号アクセラレーション機能がありますが、機種や設定によっては処理能力がボトルネックになります。
なお、速度制限は端末だけでなく、VPNサーバーの処理能力や混雑状況 にも依存します。
VPNは通信パケットを別のプロトコルで包み込む(カプセル化)ため、ヘッダが追加されます。
この追加分は方式によって異なりますが、結果として
特に問題になりやすいのは、Path MTU Discovery(PMTUD)が正常に機能しない場合 です。
ICMPが遮断されるなどすると、パケットが黒穴化(black hole)し、一部サイトだけ遅い・開かないといった症状が出ることがあります。
これは「VPNだから必ず起こる」というものではありませんが、特定条件下で顕在化しやすい問題です。
VPN経由で遅延が増えると、TCPの輻輳制御アルゴリズムに影響が出ます。
その結果、理論上の回線速度が出なくなることがあります。
これは「再送が増えるから遅い」という単純な話ではなく、遅延 × 損失 × 輻輳制御の組み合わせ がスループットを制限する構造です。
商用VPNや企業VPNでは、同時接続数が増える時間帯に性能が低下することがあります。
ボトルネックになり得る箇所
特に無料VPNではリソースが限られていることが多く、混雑の影響を受けやすい傾向があります。
企業環境では、VPNの出口で以下の処理が行われることがあります。
この場合、遅延の原因は「VPNそのもの」ではなく、VPN経由で通るセキュリティ経路 にあることも少なくありません。
VPN方式によって性能特性は異なります。
OpenVPNをTCPモードで利用すると、内部通信もTCPの場合に「TCP over TCP」となり、損失環境で不利になることがあります。
ただし、制限されたネットワーク環境ではTCPモードが有効な場合もあります。
したがって、「この方式は常に速い/遅い」と断定することはできません。
VPN接続時にDNSがVPN側に切り替わる場合があります。
DNS応答が遅いと
企業VPNではDNSを変更すると社内ドメインが解決できなくなることがあるため、勝手な変更は推奨されません。
モバイル回線や公共Wi-Fiでは、以下の影響を受けることがあります。
これらがVPN通信と組み合わさることで、不安定さや速度低下が顕在化する場合があります。
VPNが遅くなる主因は、次の3つに大別できます。
どの要因が支配的になるかは、
によって変わります。
したがって、「VPNは遅い」という単純な結論ではなく、どこが律速になっているかを切り分けることが本質的な対処方法 になります。
以上、VPN接続はなぜ遅いのかについてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。