FortiGateの「ダイナミックゲートウェイ(Dynamic Gateway)」は、複数のWAN回線(例:光回線、LTE、5Gなど)を使用する際に、インターネットへの最適な経路を自動的に選択・切り替えるための高度なルーティング機能です。
主にSD-WAN(Software-Defined Wide Area Network)の機能の一部として利用されます。
以下では、ダイナミックゲートウェイの仕組み、構成方法、メリット、実際の運用例などを体系的に解説します。
「ダイナミックゲートウェイ」は、FortiOSのSD-WAN機能により実現される、動的なデフォルトゲートウェイの概念です。
従来のルーターでは固定的に「このWANインターフェースがデフォルトゲートウェイ」と設定しますが、FortiGateではアプリケーションのトラフィック特性や回線の状態に応じて、動的に最適なWAN回線を選択できます。
企業ネットワークでは、以下のような課題があります。
これらを手動のルーティング設定や静的ルートでは実現しきれません。そこでSD-WAN機能の一部であるダイナミックゲートウェイが登場します。
FortiGateのSD-WANゾーンに複数のWANインターフェースを登録すると、それらが一つの「仮想インターフェース」として機能し、仮想的なデフォルトゲートウェイが生成されます。
この仮想インターフェースが「ダイナミックゲートウェイ」です。
Network > SD-WAN
からゾーンを作成0.0.0.0/0
のデフォルトルートをダイナミックゲートウェイ(sd-wan
)に設定項目 | 内容 |
---|---|
可用性の向上 | WAN回線に障害があっても即座に別回線へ切替(フェイルオーバー) |
コスト最適化 | 優先順位をつけることで高価な回線の使用頻度を減らせる |
アプリケーション最適化 | 各種アプリに応じて最適な回線を選択でき、品質向上 |
運用の簡素化 | GUIで一括設定・可視化でき、複雑な静的ルートが不要 |
柔軟性 | VPNやクラウド接続もSD-WANルールに取り込める |
config system virtual-wan-link
config members
edit 1
set interface "wan1"
next
edit 2
set interface "wan2"
next
end
config health-check
edit "Google-Ping"
set server "8.8.8.8"
set update-cascade-interface enable
set members 1 2
next
end
config service
edit 1
set name "default"
set mode priority
set dst "0.0.0.0/0"
set priority-members 1 2
next
end
end
この例では、GoogleのDNSを監視対象とし、WAN1を優先しつつ、障害時はWAN2へ切り替えるという基本構成です。
機能名 | 概要 | ダイナミックゲートウェイとの関係 |
---|---|---|
静的ルーティング | 固定経路を手動で設定 | 柔軟性がなく、障害時の切替も難しい |
ポリシールーティング | トラフィック条件に応じた手動ルート指定 | 柔軟だが、動的な状態変化には弱い |
SD-WAN | 遅延や損失などを考慮して動的にルーティング | ダイナミックゲートウェイの基盤技術 |
FortiGateの「ダイナミックゲートウェイ」は、SD-WAN機能の中核として非常に強力な機能であり、可用性、柔軟性、運用性、コスト効率の向上を同時に実現できます。
特に、複数のインターネット回線を持つ企業や、品質の高い通信を求める業種(医療・教育・小売など)にとっては、導入価値の高いソリューションです。
以上、FortiGateのダイナミックゲートウェイについてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。