従来型ファイアウォールの役割
従来型(L3/L4中心)のファイアウォールは、ネットワーク境界における基本的な通信制御を担います。
主な機能は以下の通りです。
- パケットフィルタリング
IPアドレス・ポート番号・プロトコルに基づき、通信を許可または拒否。
- ステートフルインスペクション
通信セッションの開始・継続・終了を認識し、正規のセッションのみ許可。
- NAT(ネットワークアドレス変換)
多くのファイアウォール製品がNAT機能を併せ持ち、プライベートIPをグローバルIPに変換。
このように従来型は「通信を通すか遮断するか」というシンプルな境界防御が中心です。
FortiGateの特徴
FortiGateは、単なる境界防御に留まらず、次世代ファイアウォール(NGFW)/統合脅威管理(UTM)として多層的なセキュリティ機能を統合しています。
多彩なセキュリティ機能
- アプリケーション制御
ポート番号に依存せず、「Teams」「YouTube」などアプリ単位で制御可能。
- IPS(侵入防御)
既知の攻撃シグネチャや異常な通信パターンを検知・遮断。
- アンチウイルス/アンチマルウェア
ゲートウェイでマルウェアを検知。
- Webフィルタリング
危険サイトや業務に不要なカテゴリへのアクセスを制限。
- SSL/TLSインスペクション
暗号化通信を復号・検査し、隠れた脅威を可視化。
※復号には端末への証明書配布が必要で、証明書ピンニングや一部アプリは対象外となる場合があります。
FortiOSによる統合管理
- FortiOS上で全機能を一元管理。GUIで直感的にポリシー設定可能。
- 大規模環境では FortiManager(集中管理)、FortiAnalyzer(ログ分析) と連携可能。
FortiGuardによる脅威インテリジェンス
- Fortinetのクラウド型サービスFortiGuardがシグネチャやレピュテーションDBを自動更新。
- サンドボックス連携により、新種のマルウェアやゼロデイ攻撃にも迅速に追随。
- ※これらはサブスクリプション契約が前提。
ハードウェア性能
- Fortinet独自のASIC(NP/CP/SoC)により、高スループットと低遅延を実現。
- ただし、深い検査(SSL復号+IPS+AV)を同時有効化すると、実効スループットはカタログ値より低下する場合があります。
FortiGateと従来型ファイアウォールの比較
項目 |
従来型FW(L3/L4中心) |
FortiGate(NGFW/UTM) |
主機能 |
パケットフィルタ/ステートフル検査、(多くはNATも搭載) |
アプリ制御、IPS、AV、URLフィルタ、DNS保護、SSL/TLS検査など |
可視化 |
IP/ポート単位 |
アプリ/ユーザー/URLカテゴリまで可視化 |
暗号化通信 |
基本は未検査 |
復号型/非復号型検査に対応(性能・運用要件あり) |
脅威情報 |
手動更新が中心 |
FortiGuardで自動更新(サブスク契約が必要) |
性能設計 |
汎用CPUによる処理 |
専用ASICで高速化(モデル依存、検査強度で実効値変動) |
管理 |
個別設定 |
FortiOSで統合、FortiManager/Analyzerで集中管理 |
適用範囲 |
境界防御が中心 |
境界+内部セグメント+SD-WAN/ZTNA/SASE連携まで対応 |
適用シーンの違い
- 従来型ファイアウォール
小規模環境や、単純なアクセス制御を求めるシナリオで有効。
例:「社内から外部へのHTTP/HTTPSのみ許可」。
- FortiGate
中〜大規模環境で、マルウェア対策・情報漏洩防止・クラウドやリモート接続との統合セキュリティが必要なケースに最適。
例:企業、官公庁、教育機関での多層防御、SD-WANによる拠点間接続、ゼロトラスト環境の実現。
まとめ
FortiGateは、従来のファイアウォール機能に加え、アプリ制御、IPS、マルウェア対策、SSL検査、SD-WANなどを統合した総合的なセキュリティ基盤です。
単純な境界防御が中心の従来型ファイアウォールと比べ、保護範囲の広さ・脅威情報の自動更新・高い拡張性が最大の違いとなります。
言い換えると、FortiGateは“境界を超えた多層防御を担う次世代型ファイアウォール” です。
以上、FortiGateと一般的なファイアウォールの違いについてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。