FortiGateファイアウォールでは、QoS(Quality of Service)を活用して、通信の優先順位付けや帯域制御を行うことができます。
リアルタイム通信(VoIP、ビデオ会議)、業務アプリケーション、バックアップなど、異なる種類のトラフィックに対して、優先順位を与えることで、ネットワークの安定性と快適性を保つことが可能です。
ネットワークの中には、こんな「性格の違う通信」が混ざっています。
通信の種類 | 特徴 | 例 | 優先したいか |
---|---|---|---|
音声・通話(VoIP) | 少しの遅れでも不快 | Zoom、電話 | はい |
業務アプリ | 安定動作が必要 | Salesforce、メール | はい |
動画・SNS | 少し遅れても平気 | YouTube、Instagram | 普通 |
バックアップ | 大量に流すけど緊急じゃない | ファイル転送 | あとでOK |
たとえばZoom会議中に、別の社員がYouTubeで動画を見たり、社内サーバーが自動バックアップを始めたりすると、通話の音声がプツプツ途切れることがあります。
そんなときQoSを使えば、「Zoomは最優先で流す、YouTubeはちょっと我慢してもらう」という調整ができます。
FortiGateにおけるQoSは、大きく以下3つの要素で構成されます。
要素 | 機能内容 |
---|---|
トラフィックシェーピング(Traffic Shaping) | 通信ごとの帯域を制御(最大値・最低保証) |
優先順位制御(Traffic Priority) | パケット処理キューの中で優先度を設定 |
DSCP(DiffServ Code Point)制御 | L3ヘッダのDSCP値を用いて他ネットワーク機器と連携 |
これらは「Shaping Policy(シェーピングポリシー)」と「Traffic Shaper」の2つを連携して使うことで設定されます。
FortiGateは以下の条件を元にトラフィックを分類します。
FortiGateでは以下の4段階の優先度が設定可能です。
優先度 | 説明 |
---|---|
High | 最も高い優先度。VoIPなどに推奨 |
Medium | 標準的な業務トラフィック向け |
Low | 大量データ送信やバックアップ用 |
Default | その他すべてのトラフィックに適用可能な標準設定(明示的に指定可能) |
※「Default」は明示的に指定可能な優先度であり、未設定トラフィックに適用されるわけではありません。
Traffic Priority: High
などを設定注意点 | 解説 |
---|---|
Traffic ShaperとShaping Policyの組み合わせが必要 | シェーピングポリシー単体では帯域制御はできない。Traffic Shaperとの併用が前提 |
ポリシー評価は上から順にマッチ | 評価順が影響するため、意図した通りにトラフィックが制御されているか注意 |
WAN Optimizationと併用時の注意 | WAN最適化が有効な通信は再パケット化されるため、DSCPやQoSが適切に機能しない場合がある |
ISPがDSCPに対応しているかを確認 | FortiGateでDSCPを設定しても、上位ネットワーク(ISPやルーター)がそれを処理しなければ効果は限定的 |
FortiGateのQoSにおける優先制御は、トラフィックの分類と優先順位設定を通じて、重要な通信に安定した帯域と処理リソースを割り当てる仕組みです。
VoIP・業務トラフィックの安定運用、不要トラフィックの制限、帯域競合の緩和など、実用効果が非常に高いため、ネットワーク設計の段階からQoSを計画的に導入することが推奨されます。
以上、FortiGateのQoSの優先制御についてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。